囲碁とはどのようなゲームなのかについての私なりの解釈
はじめに
お初にお目にかかります。なかやまです。
私は高校生のころに囲碁部に入部してから、囲碁を本格的に打ち始めました。
現在は大学3回生で、今年で囲碁歴6年目になります。
囲碁の棋力は3段ほどで囲碁クエストという囲碁対戦用アプリではR1800台の実力です。(TopcoderだとYellowcorderでR1650くらいのレベルだと思います)
そんな私が今回縁あってKobeunivのAdventcarenderを書かせていただくことになりました。それでは本題に移りたいと思います。
皆さんはNHK教育で午後12時30分から放送されている「NHK杯テレビ囲碁トーナメント」を見たことはあるでしょうか?
テレビでたまたまかかっているのを見たことがある方もいるかもしれませんが、正直「何をやっているのかわからない」という人が多いのではないでしょうか?
囲碁のルールを知らない人はもちろん囲碁のルールを覚えて9路盤などの小さい碁盤で打ったことがある人でも本来の対戦用碁盤である19路盤ではいったい何をやっているのかわからないという人もいると思います。
今回は囲碁経験者の立場から私なりに考える囲碁というゲームの終わり方と勝ちになる条件および進み方を資産運用っぽいことやプログラミングっぽいことと絡めながら書いてみたいと思います。
なお、今回のブログは囲碁の基本的なルールを理解していることを前提としています。
囲碁を全く知らない人のために、入門用サイトとして以下のサイトをここでは紹介しておきます。(最低でも石を取ることについては読んでおかれることを推奨します。)
それでは本論に入っていきたいと思います。
囲碁はどうなったら終わってどうすれば勝ちになるか
「より多くの陣地をとったら勝ち」あるいは「陣地をとるゲームだ」
とのように理解している人がほとんどだと思います。
確かにこの理解の仕方はルール的には正しいのですがこの言葉を知っているだけでは囲碁におけるこの言葉の意味を正しく理解しているとは言えません。
例えば以下の盤面を見てみましょう。
i以下の盤面は見た目からして黒の方が陣地が多いように見えると思います。
もしもこのまま白と黒がお互いに「終わりですね」と了承したら「終局(囲碁が終わったということ)」ということになり、陣地が広い黒が勝ちとなります。
しかし囲碁は勝負事ですから白だって負けたくないわけです。
そこで白はこのようにして黒の陣地を奪いに来るかもしれません。
このようになってしまうと先ほどのように黒が勝っている状況とは言えなくなってしまいます。
実は囲碁でゲームが終わったか否かは実は対局者同士の「了承」によるのです。
このような取り決めになっているため囲碁はどこで終わったかがわかりにくいという課題を残しているのです。
それではどのようにしたら囲碁というゲームが終わり、かつどちらが勝ったのかがきまるのでしょうか?
ここでは資産運用を例にとって以下のように定義することにします。
囲碁は
「ある限られた資産をこれ以上互いに奪うことができなくなったとき」
にゲームが終わったとする
この定義がどのような意味合いを持つかについてはこれから下で述べるゲームの進行の仕方を読んでいただければ納得していただけると思います。
囲碁というゲームの進み方
序盤(おおよそ1手目~30手目)
囲碁では序盤は隅の方から打つのが良いとされています。しかしなぜそのようにするのでしょうか?
この答えは以下の盤面を見てもらうと理解できるでしょう。
上の碁盤では黒白ともに9目(9つ)の陣地をとろうとしています。しかし白が12手掛けて9目の陣地を獲得しているのに対し、黒はその半分のわずか6手で9目の陣地を獲得することに成功しています。
これは端の部分はその外側には石を打つことができない状態で、扱いとしては「味方側の石が予め囲ってくれている部分」ととらえるからなのです。
囲碁では1手1手が陣地という資産を獲得するための資本投下であるといえます。
少ない手数で多くの陣地を獲得できるということは非常に効率がよい資本投下、いわばローリスクハイリターンな資本投下といえるでしょう。
このような理由から一般的には序盤は隅から打ち始めるのが定説となっています。
囲碁というゲームには序盤の打ち方の指針(プログラミングでいうとライブラリのようなもの)の一種として「定石」と呼ばれるものがあります。
例えば定石の1つに以下のようなものがあります。(三々定石とよばれるものです)
白は先ほど述べた「隅は陣地をとるのに効率が良い」という原理にのっとって陣地を獲得しています。
こうした陣地はこれ以上減らすのは難しく一般的に「実利」と呼ばれます。
これは資産運用でいうと「現金」にあたります。
それでは、この現金を白に与えてしまっている黒はただ単に損をしているだけなのでしょうか?
そのようなことはありません。以下の図をご覧ください。
これは先ほどの定石を4つ並べてみたものです。
中央に大きな黒の陣地ができそうな雰囲気がしませんか?
もしも黒が中央をすべて陣地にすることができたとしたら、白が獲得した陣地(現金)などというものはちっぽけなものに見えてしまうほど壮大なものになります。
囲碁の言い方では黒はこの定石において「厚み」を得ているといえます。
これは資産運用では「投資」にあたります。
投資は投資家の裁量次第で大金にも一文無しにもなりえるもので現金とは違い確実なものではありません。
そのため、資本をいかにしてかつどのタイミングで回収するかが投資において重要になってきますがこれは囲碁においても同様です。
実際に以下の二つの盤面を見比べてみましょう。(最後に打ったところは真ん中に点で示されています。以下打った手はこの定義で記述することにします)
上の盤面は黒が辺の中央に打った場合です。
いかにも真ん中に大きな黒の陣地ができそうです。
つまりこの真ん中に打った黒の手は資本の回収に成功しているといえます。
下の盤面は黒がほかのところに打った後に白が辺の中央に打って多少展開した場合
です。
上の盤面に比べて真ん中に黒の大きな陣地ができそうにはありません。
これでは黒が資本回収に成功したとは言えないでしょう。
以上のことを用いて、序盤では「資産の大まかな獲得のために現金を着実に得たり投資に充てたりする行為を互いにしながら、目標資産で優位に立つ」ことを目標に打ち進めているといえます。
現金を重視するか投資を重視するかは投資家(プレイヤー)によるところが大きいです。
どちらがいいとは一概には言えませんが現代のプロ棋士(プロとして囲碁を打つ人たち)たちは比較的現金重視であるともいわれています。
中盤(おおよそ30手目~100手前半)
中盤は囲碁においては一番個性が出るところで人によって打ち方は様々でひとくくりにして説明するのは至難の業です。
しかし目標としては共通している部分があり、それは
ということです。
ここでは基本方針として中盤以降に打たれる手を紹介していきたいと思います。
- 自らの陣地を広げる手
資産運用では「今ある資本の価値をさらに高めていく行為」に該当します。
以下の図を見てもらうのがわかりやすいと思います。
白が打った手は碁盤から見て下半分の陣地を拡大しているといえます。
- 相手の陣地を減らしに行く手
資産運用では「相手の資本が増えないように制限する行為」に該当します。
例として以下のような図があげられます。
先ほど上にあげた図と見比べると、黒が打った手は白が下半分の陣地を増やすのを妨害しているといえます。
二つの図を見て気づかれた方もいらっしゃるかもしれないですが、実は自らの陣地を増やしに行く行為と相手の陣地を減らしに行く行為は相対する関係にあります。
しかし、その陣地の増え方と減り方の比は常に1:1の関係にあるわけではなく、手によって変化します。
そのため一般には「自らの陣地を大きく増やし勝つ相手の陣地を大きく減らす手」が良い手とされます。
- 相手の石を取る
相手の石を攻めることは資産運用においては「相手がこれまで投資してきた資本を丸ごともぎ取って自分のものにする」ことを指し、いわば究極の相手に対する妨害といえます。
囲碁では石をとると、陣地をとり終わった際にとった石を相手の陣地に埋めて減らすことができます。
先ほどから囲碁は投資のゲームといっていますが石をとられることは基本的にはこれまで投資してきた石がすべて無効化されるどころかむしろ借金として抱えることになります。
すなわち、基本的には石をとられることはかなりの損失になるといえます。(しかし、この損失を上回る実利や厚みを得られる場合は石をわざと取らせることもあります。これについては今回は省きますが興味のある方は調べてみてください。)
以下に一例を示しておきます。
この状況では右上の白の石が周りを黒に囲われて孤立しています。
黒が打った手はこの白をあわよくばまるごととってやろうという実に野心的な手でかつ良い手です。
白はもし黒に取られてしまうと損をしてしまうので取られないように工夫をすることになります。
この「相手に取られないように工夫する」ことも資産運用に言い換えれば「投資が無駄にならないようにする」ことを指し、中盤戦において重要になってくる概念の一つとなっています。
この攻めというものを深く理解するのに大事な概念として、「石の生き死に」と呼ばれるものがあります。
詳細については次回ブログを書く際にこのことに関わる記事をかけたらよいなと考えています。(冒頭で示した入門サイトにも基本的なことは書かれていますので参照しておかれると次回の記事が読みやすくなるものと思われます)
終盤(おおよそ100手前半~終局)
終盤は囲碁での言い方では「ヨセ」と呼ばれる分野になります。
資産運用に例えると「決算前の最後の資本回収」といえる分野になります。
ここを怠るとせっかく勝っていた試合を落としてしまう可能性もあり気を抜くことができない分野です。
資産の争いでも非常に差が小さい場合はたとえ1縁であっても無駄にできないのと同じで投資家は最善の回収が求められます。
具体的な資産の回収の仕方として以下の例を考えてみましょう。
Aさんがいらなくなった品物をあげるからと友達のBさんとCさんを呼びました。
Aさんが提示してきた品物は4つありそれぞれ価値が大きい順に700円、500円、300円、100円となっています。
順番はBさんが先に取ることとし、1回の順番では1つの品物をとることしかできないとします。
この場合、BさんおよびCさんともに価値が最も高くなるようにとった場合の取り方はどのようになるでしょうか?
もちろんBさんが700円、300円の順にとって行き、Cさんは500円、100円の順にとっていくことが想定されます。
このような取り方は「価値が大きいものから順に取っていく」取り方ということができ、日常生活においてもよく用いられる考え方といえるでしょう。
囲碁でもこの概念は通用し、「自分の陣地が最も増える(あるいは相手の陣地を減らすことで相対的に自分の陣地を増やす)と見込まれる場所から順に打っていく」ことが囲碁における終盤の基本方針です。
以下の盤面を見てみましょう。(ここからの解説では6路盤と呼ばれるミニ碁盤を用います)
次は黒の順番ですがここから少しでも黒が自分の陣地を相対的に増やすためにはどうすればよいでしょうか?
囲碁ではこのようにして相手の資産を減らしにいくように打つのが一般的に正解といわれます。
白も資産をこれ以上減らされると損失が増えてしまうのでこれ以上の侵略を阻止します。
次にもし白に黒が今打ったところに打たれてしまうと石をとられてしまい損失が大きくなるのでこれを阻止します。
この手は少し難しいのですが、もし黒に白が今打った場所に打たれてしまうと白はどのようにしても石を取られるという損失を回避することができません。(気になる方は実際に確認してみてください)
したがって白はこの損失を回避するためにこの地点に打ちます。
以下、このような結果になり最終的に黒の4目勝ち(黒の方が4つ陣地が多い)という状況になるのが最初に示した盤面からの最善の進行となります。
もし、仮に黒がその他の場所に打った場合はどうなるでしょうか?いかにほかのところに打った場合の一例を示します。
以下の盤面は黒が右側の少し変なところに打った場合からの結果図です。
御覧のように勝負結果は先ほどとは異なり白の5目勝ちとなっています。
このように終盤の決算方法を誤ると勝負結果が大きく異なってしまうことが見て取れると思います。
19路盤においても今まで延べた概念は共通して用いることができます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
おわりの言葉を述べる前にまずこの記事が非常に長い記事になってしまったことを心から謝罪いたします。(これは私の文章能力のなさが原因です。記事を分割するべきだったかもしれません。)
分かりにくい部分や意味不明な部分もあったかもしれません。(これも同様の原因です。)
しかし、私なりにこれまでの経験などをもちいて自分なりに少しでもわかりやすい解釈にしようとはしてきた所存でございます。
この記事を読んで少しでも囲碁に興味を持っていただけたらこれほど幸いなことはありません。
最後まで読んでいただいた読者の皆様、本当にありがとうございました!!!
追記:
非常にたくさんの方に読んでいただいたり、Bookmarkをつけていただいたりして本当に感謝感激の限りです!
aganoさん、wrssさん、yshino271さん、間違いを指摘していただきありがとうございます。
非常に助かります!
実はこの記事はKobeUnivAdventCarenderのための記事で期日に間に合わせるために慌てて書いたのでミスを確認する暇がありませんでした。
さらに一部加筆もしましたので多くの人に読んでいただけると嬉しいです!
そして、KobeUnivAdventCarenderのほかの方が書いた記事(主にプログラミングなどの技術的な記事が多いです)も読んでいただけるとうれしいです!
以下のリンクにKobeUnivAdventCarenderの記事があります。
KobeUniv Advent Calendar 2015 - Adventar